暑い中、つくつくぼうしが鳴き、虫の音が元気になってきました。いつの間にか日暮れも早くなってきています。秋が忍び寄っているんですね。
さて、新作「どんぐりと山猫」読みあわせがはじまりました。初演は来年7月の「夏休みおやこ人形劇場」です。じっくりと作り込んでいきます。
今は、原作「どんぐりと山猫」をどう読みとくかの学びあいの時間。上演人数の変更もあり、台本もリニューアルしました。原作をどう読みとくかが、台本の主題に関わります。時間をかけた学びあいにしたいと思います。
「どんぐりと山猫」は、単なる「でくの坊礼賛」の物語ではないのです。ここが今回作品の出発点です。
もちろん宮澤賢治の生き方には、でくの坊に向けての下降指向が強くあります。それは、賢治の魅力の源泉の一つです。
身を切って血まみれになるような苛烈な賢治の生き方を、傷つかない安全圈から礼賛するようでは、それは偽善そのものです。そこから、通俗的な物語の罠にはまるのです。
「どんぐりと山猫」の演劇化や人形劇化には、そんなお気楽な偽善の匂いがつきまといがちです。
そのような作品が、じつはごまんとあふれています。
なんと通俗的な…。
そんな作品は、はっきり言ってつまらない。ワクワクもドキドキもしない。退屈。
今回作品製作にあたっては、通俗性を慎重に排除するところから、稽古を進めたいと思っています。
では「どんぐりと山猫」は、どんな作品なのでしょう?
私は「どんぐりと山猫」を「近代と野性」の交流と対立を描いた作品だと思っています。
私たちが疑いなく寄りかかっている近代の感受性と価値観に風穴を開ける、挑戦的な作品であると思うのです。
そんな賢治の指向性を指摘した本に、「森のゲリラ宮澤賢治」という本だってあるのです。
私たちは、狩猟採集民社会(野性の思考の世界)の感受性や価値観を感知することは、もはやできません。
それは、彼方に去ってしまった社会なのです。想像すらできないのです。
しかし、違った感受性と価値観の社会を感知することが出来れば、私たちは今の社会の「自明性の罠」から距離をとることが出来ます。
自明性の罠とは、あたりまえと思っていることが、ほんとはあたりまえではないことに気づかないことです。そんな罠のことです。
「どんぐりと山猫」は、そこまでの射程を内包している童話だと思います。
さあ、主人公一郎くんとともに、イーハトーブの世界に旅をしてみましょう。
強固な一つの価値観に支配されていないイーハトーブの世界。
そこで、かしましくも力強く「誰が偉いか」をエネルギッシュに競いあうどんぐりたち。そのどんぐりたちを、「まるでなってないのが一番偉い」と、薄っぺらなモラルで一喝してみましょう。一郎くんのように。
山猫のお礼に「黄金色のどんぐり」を選んでみましょう。
塩鮭の頭よりも、黄金色のどんぐりをあたりまえに選ぶ一郎くんのように。
そして、山猫からの葉書が二度と届かなくなる一郎くんの寂しさ(喪失感)を、一緒に味わってみましょう。
それは、一郎くんの寂しさであると同時に、私たちの抱える寂しさであると思うのです。なにか大切なものを置いてきてしまったような喪失感。
私たちはそんな寂しさを抱えながら、何を越えていけばよいのでしょうか。私たちも模索しながら、一郎くんにエールを送ってみたいと思います。
もちろん、創る側の意図とは違ったものを見つける御客様も大歓迎です。創る側の意図は、神様のように絶対のものではありません。
そして、子どもも大人も楽しめる作品に仕上げていきますよ。
さて、新作「どんぐりと山猫」製作の旅がはじまりました。ここで書いた地点まで行きつけるのでしょうか?
行きつきたいなぁ。行きつける力は蓄えてきているはずなのだから。
さあ、ゴール目指した一年間の長旅です。旅は楽しいもの。旅を楽しみながら歩んでまいります。
【釜】
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どんぐりと山猫稽古スタート
- Date:2020/08/21(金)18:58
「大人のための人形劇場」基調提案
- Date:2020/08/14(金)20:09
夏の星がきらめく夜。虫の音が聞こえるようになりました。秋が近づいています。
さて、12月の「こどもと関わる大人のための人形劇学校」での分科会「こどもの発達に人形劇はどう関わるか」の基調提案「いま、こどもの発達に問われているもの」を郵送しました。(長い名称ですいません。)
たぶん本日くらいには、県内関係者の方々に届いていると思います。
この分科会は、人形劇関係者、こどもの芸術活動に関わる方々、教師、教育研究者、地域教育関係者、教育市民運動関係者の方々に集っていただこうとする目的で設置しました。
総合的に人形劇とこどもの発達を考えあう機会を創りたいと思うのです。
一回の集いで深いところまで掘り下げていくのは、たぶん時間が足りないかもしれません。
けれども、「大人のための人形劇学校」は、形を変えながらも来年も継続していきたいと考えています。
今回の分科会設置は、その第一段階と考えています。
それにしても、大変な長文になってしまった基調提案です。何度も推敲しましたが、読み返すと、もう一回の推敲が必要だったかと、後悔もします。
それでも、分科会で発言をお願いしたい方々には、そろそろ送付しないとならない時期が来てしまいました。
基調提案が届いた皆様、ぶしつけな郵送になったと思います。それも長文のものがいきなり届いたので、さぞかし驚かれたことと思います。
この場を借りてお詫び申し上げます。
多岐にわたる論考で、読みづらいと推察されますが、読んでいただければ幸いです。
また発言要請をお願いしたい方々以外にも、郵送しております。
もしよろしければ、忌憚なき御批判や御意見をお寄せいただければ、こんなに嬉しいことはありません。
こどもの発達と教育・芸術への考察がより豊かに発展していくためには、様々な方々が寄ってたかって、ケンケンガクガク言い合うことが、とても大切なことだと思うからです。
それでは、この時期は夜空にペルセウス座流星群が飛ぶ時期です。
小生、夜空を見上げても、まだ流星を一個も見つけていません。
皆様も、夜空を見上げてみてはいかがでしょうか?
【釜】
夏休みおやこ人形劇場、終わりました
- Date:2020/08/10(月)15:40
夏休みおやこ人形劇場、終わりました。2ステージで70名以上のお客様に、御来場いただきました。
ソーシャルディスタンスを確保するため、当日チケット販売は中止しました。公演当日に劇団にお問い合わせされたお客様、大変申し訳ありませんでした。
さて、公演とコロナ感染防止を両立させることは、小さな団体にとって、とても大変でしたが、最大限の努力を払ったつもりです。お客様が楽しんで帰られたことが、私たちにとって一番うれしいことでした。
お越しいただいたお客様方、厚くお礼申し上げます。
次にコロナ禍は、人と人を分断しているようです。今回、つくづくそう思いました。
コロナ禍の中での人々の諸活動について、人々の評価が分かれています。
どうもそれは、人々の日頃の価値観の現れであるようなのです。日頃は見えない「価値観」があぶり出されているようなのです。
そして、お互いに話しが通じなくなっています。
舞台芸術は、人と人をつなぐメディアです。
劇列車の事務局を構成している私たちも、そのことに自覚的です。
自覚的であり続けたいと思っています。
分断が進むからこそ、つなぐことが必要です。
平和な日常生活(平時)では、上の言葉は誰でもが言います。使い古された陳腐な言葉とも言えるでしょう。
しかしコロナ禍(戦時)では、その使い古された言葉の質が試されているのです。
人と人が分断されているからこそ、人をつなぐ仕事を放棄してはならないと思います。だから今回、劇列車事務局は、リスクを覚悟の上で、開催決行を決めたのでした。
戦時での振る舞いこそ、人や団体の真価を決めるものなのです。
団体のほんとうの姿が表れるものなのです。
ですから、日頃「どんなこどもにも劇を」と立派な言っていても、まだ開催可能な状態で自粛を決めてしまっては、今まで言っていたその言葉を、「私たちは本気か?」と、私たち自身が信じられなくなるのです。
私たち自身が私たち自身に、自ら疑問符をつけてしまうのです。
ここで自粛しては、私たちが私たち自身を信用できなくなってしまう…。
これほど不幸で悲しいことはありません。
もちろん、違った考えをお持ちの方々もいらっしゃいますし、人が抱えている事情も様々です。そのことは、痛いほどよくわかりました。
ですから今回の事務局の開催決定は、幾多の考え方の中の一つを、事務局が選択したということです。
自粛を決めれば、人は納得するでしょう。けれども、私たちは私たちに納得できなくなるのです。様々なお考えにふれながらも、上記のことが夏休みおやこ人形劇場を自粛しなかった最大の理由です。
劇列車は「どんなこどもにも劇を!」をミッションに掲げて、走って来ました。
あるメンバーが言いました。列車はお客が一人でも0でも、定刻どおりに運行すると。
そうなのです。劇列車は、お客様が一人であっても公演するのです。雨が降ろうが風が吹こうが、劇列車は走るのです。劇列車は、単純にお客様が多ければよいなどとは、考えていません。
それにしても、事務局決定と違った意見をお持ちの方であっても、御協力をいただきましたこと、ほんとうにありがとうございました。
皆様のお力添えがなければ、公演は出来ませんでした。改めまして、御協力いただいた皆様にお礼申し上げます。
【釜】
ご観劇予定の皆様へ
- Date:2020/08/06(木)17:16
夏休みおやこ人形劇場は、8月9日予定どおり開催します。
新型コロナウイルス感染防止策は、とっております。
■体調不良の方、発熱された方は、ご入場を御遠慮下さい。
■当日、御自宅での検温をお願いいたします。
■検温をされてない方は、当日受付にて検温をさせていただきます。また健康チェックアンケートへの御記入もお願いいたします。
また、コロナウイルス感染が御心配な方は、入場を御遠慮下さい。当日精算券をお申し込みの方でも、キャンセルできます。キャンセル料は派生しません。事前のキャンセル連絡は必要ございません。
また、プレイガイドで前売り券を御購入された方は、事前に観劇にあたっての告知事項を郵送できておりません。
HPにアップしておりますので、御確認いただければ幸いです。
この状況下での公演開催につきましては、劇団内部でも開催か中止か、討議を繰り返して来ました。その結果として、開催を決めました。
真剣な討議の結果です。細心の感染防止を心がけます。御理解いただきたくお願い申し上げます。
【釜】