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子どもの体験喪失について思う

新しい年度がはじまり、劇列車も今年度事業および新作について思考し、話し合う日々が続いています。
2022年度事業を確定させるために、当然、昨年度までに実施してきた事業をふりかえることになります。

2020年、社会がコロナ禍に見舞われてから、一つひとつが手探りでした。
公演準備の方法、上演者と観客との関係性、ワークショップにおけるプログラムのあり方…など、感染拡大予防対策をとりながら実施するにはどうすればいいか、何度も検証し試行錯誤してきました。

私たちも、社会も、常時マスク着用やフィジカルディスタンスの確保など、この2年間でコロナウイルスとの付き合い方にだいぶ慣れてきたように思います。

その一方で、ふと思うのです。
付き合い方に“慣れ”ることで、“喪失”したものがあるのではないのか、と。

虐待を受け続けた被虐待者は、感情を失っていきます。
感情を表出しないことが自分を守ることにつながる、ということを学習していくのです。
それは自己防衛のためであり、生きていくために必要に迫られて無自覚に行われる学びなのです。
感情の喪失だけでなく、思考することも放棄していきます。思考しても答えがでず、思考すればするほど自身が辛くなっていくからです。
感情を失い思考放棄に陥っている被虐待者は、たとえ自身の置かれている環境が劇的に改善され、良い環境のなかに何十年と身を置いたとしても、“自然と”回復することはありません。

この2年間、フィジカルディスタンスを保つため、グループでの活動は敬遠されてきました。それはもちろん、やむを得ないことです。
感染拡大予防対策をとりながら、どう仲間と活動をする喜びを体験できるか、それぞれの現場で試行錯誤が行われてきたことと思います。私たちの事業も、同じように試行錯誤してきました。

2年前の子どもたちは、落ち着きがなく、内側に溜まった負のエネルギーを発散させようともがいていました。
1年前の子どもたちも、同じような様子がみられました。

直近で出会う子どもたちは、ずいぶんと状況に慣れ、受け入れ、従順に、当たり前のように過ごしています。
表情筋がほとんど動かないマスク越しの顔を見合わせながら、マスク越しにとても小さな声でしゃべりながら、日常を過ごしているようなのです。

この2年間で、子どもたちは感情を表出できる機会がどれほどあったでしょうか。
人との関わりをつうじて、苦悩し思考し喜びを感じあえる機会がどれほどあったでしょうか。

子どもたちが体験喪失によって得られなかったものは、『コロナが落ち着いたら』自然と回復するのでしょうか。

たった2年。何が失われたのか、あるいは、失われていないのか。

昨年度の事業をふりかえり、新しい年度の事業を計画するにあたって、思考することは山積みです。

【尚】

春の巡回公演を終えて

4月になりました。キンポウゲにレンゲ、アザミも盛りを迎えようとしています。

さて、4月4日に春の巡回公演の最終回を終えました。
ほっと一安心。
現在は、1年間の事業を振り返りながら、今後1年の事業計画づくりに勤しんでおります。

さて、2月から3月の春の巡回公演は6ヵ所が予定されていました。
他にワークショッブに付随した上演、春のおやこ人形劇場と合わせて、計8ヵ所での上演予定でした。

コロナ感染第6波により2ヶ所がキャンセル、又は延期されましたので(これは感染防止のために、主催者側の苦渋の決断でした)、計6ヵ所での上演となりました。
この全ての上演が「どんぐりと山猫というはなし」です。

ほんとうにコロナ禍の中での上演は、とても大変です。
開催出来たところも、キャンセルを決断されたところも、延期をされたところも、コロナ禍でなければ考えなくてよいことを考えて、決断しないといけません。

どんな決断をされた方々も、様々なエネルギーをお使いになったことと思います。ほんとうにお疲れさまでした。

さて、6回連続(ほぼ1週間おき)上演によって、「どんぐりと山猫というはなし」が持つ力について、私たち自身が深く考えさせられた春の巡回公演になりました。

一つ目の発見は、「どんぐりと山猫というはなし」が「考える人形劇」であることです。

観客の方々は、観劇しながら自分を振り返り、自問自答してあるようなのです。
これは私たち自身が驚いたことです。「思考する人形劇」って可能なのです。
ほんとうに試行錯誤した甲斐がありました。
私たちは「思考する人形劇」に踏み出したのです。
まだ荒削りです。ですが確かにそこに踏み出したのです。

二つ目の発見は、次のとおりです。

それは、劇を上演するとは「事前パンフレット準備から感想の共有までを含んでの行為である」ということです。
観客の方々は、その一連の過程を楽しんであるようなのです。

劇を観る楽しみとは、上演本体だけではなく、その前後まで含めて「楽しい」ことなのですね。

劇を鑑賞するという行為について、深く考えさせられました。
こんな経験を「どんぐりと山猫というはなし」上演では積み重ねました。

私たちは、私たちがつくりあげた作品について、可能な限り、客観的な評価を下すようにしています。
思い入れがある作品であればあるほど、作品を突き放して客観的な眼でみようとします。
また、そうでなくてはなりません。

観ていただいたお客様の様々な反応に喜びを感じていますが、喜んでいるだけでは無責任になりかねません。
試行錯誤したものを喜んでくれて「めでたしめでたし」ではないのです。
それだけでは、お客様にとって失礼です。

お客様の反応から、劇を観るという行為について、深く考えを巡らしていかなくては…。
まだ至らないところをブラッシュアップしていかなくては…。

そんなこんなを踏まえて、私たちは1年間の事業を振り返り、2022年度の事業計画を練っているのです。

そんなこんなで、4月はミーティング、ミーティング。
ミーティングの連続です。
このミーティングが私たちの今後の1年間を支えます。
おざなりに出来ません。
ミーティングは、創造団体の生命線なのです。

最後に。
ミーティングを踏まえての2022年理事会と総会は、5月29日日曜日午後の予定です。
場所はえーるぴあ久留米にて。
近日中に、コアサポーター会員の皆様宛に御案内差し上げます。

コアサポーター会員の皆様、ふるって御参加いただき、御意見をいただければ幸いです。

【釜】