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2022年を振り返って

いよいよ年の瀬も押しせまってきました。
劇列車では、いまだ「どんぐりと山猫というはなし」改作のために稽古が続いています。

さて、恒例の1年の振り返りをやってみたいと思います。

最初にあげたいのは、なんといってもパペットシアターPROJECTのひろがりと深まりです。
この「困難を抱える子どもへの人形劇観劇体験支援事業」は、様々な方面へ影響を広げています。

この事業展開の中で、私たちは困難な壁に阻まれた人々の息づかい、それでも前に進もうとしている希望と勇気に直接触れることが出来ました。
それは、私たちの表現創造にも深く影響を与えています。

そしてこの事業を実施していくために、上演団体=受け入れ団体=助成団体との協同が発展しました。

また何よりもパペットシアターによって、私たちは私たちのNPOミッション「どんなこどもにも劇を!文化を!」に、魂を吹き込むことが出来たのでした。

「どんなこどもにも」とは、文字通り「どんなこどもにも」です。
難しいことは何もありません。
しかしそれを愚直に実行しようとすれば、「貧困や虐待、差別によって、社会の外縁に排除されているあらゆるこどもが子どもである」という厳しい現実に直面します。
彼らに劇を届ける必要があります(その理由は後述しています。直接書いているわけではありませんが)。
私たちはパペットシアターを通じて、NPOミッションを具体的に可視化した形で展開出来るようになりました。

次に4回にわたった「親子人形劇がっこう」をみてみます。
ここで私たちは、創造的あそぴが人間の心に与えるプラスの影響を確信しました。

親子がっこうでは、手作り紙コップ人形を使って人形劇あそびを楽しむ親子の姿がありました。
どの回でもです。

あえて断言しますが、人形劇あそびでは会場の空気が温かく和むのです。いつの回でもそうです。
そこから透けてみえるのは、親子のふれあいの時間を十分にとれず、時間にあくせくと追われる私たちの日常の姿でしょうか。

あらためて親子がっこうの意義を再確認しました。
親子がっこうとは、人形劇のツールを借りた「親子の親密なふれあい回復の場」だと思います。
私たちは、それを可能とするプログラムの開発にやっと成功しました。それが2022年の成果の一つです。

止まれ。

とはいえ、親子がっこうには、私たちがパペットシアターで訪れている親子の皆さんの多くは参加されないと思います。
親子二人でワンコインで済む程度の参加費なのですが、それでも参加されない方々が多いだろうというのが実感です。

それは経済的障壁が原因ではありません。心理的障壁が厳然とあるようです。

それも無理はありません。抑圧的な社会の中で、文化芸術も抑圧の一端を担っているのですから。乱暴なくくりかたですが、縁遠い人々には「ありがたく高級感溢れた息が詰まるもの」でしかない。

しかし、本来文化芸術には自己の内面を見つめ進化させ、自己と周囲の関係を組み替える働きがあります。
文化芸術は、自己の「意識化(世界に埋没している自己から、世界を対象化し批判的に介入する自己への変化のこと)」に必須のものです。

それが抑圧的な社会の中で、人々の「意識化」を誘発するものでなく、人々を「眠らせる」ものへと転化してしまっている…。
ここから「誰のための文化芸術か?」という問いが自然と生まれるわけです。

最後になりますが、私たちのこの1年、創造分野での仕事は、上述の自問を繰り返した試行錯誤の日々でした。

大したことが出来たわけではありません。
「さちのまだみぬ物語」
という脚本を産み出し、稽古にとりかかりました。
「どんぐりと山猫というはなし」の全面改作に取り組んでいます。
はなはだ心もとない歩みですが、私たちはこれを「民衆的な人形劇の創造」と呼んでいます。

民衆。

時代錯誤的な言葉に聞こえる皆さんもいらっしゃると思います。
しかし「大衆」でも「人民」でも「庶民」という言葉でもとらえられない何かが込められた言葉です。
私たちはこの言葉の上にしっかりと立ちたい。
この言葉に立たないと見えてこないものから、創造の仕事を進めたい。
年の瀬に大きなことを言いましたが、これが私たちの創造ベクトルの方向であります。

どうか私たちのつくりだす作品を手厳しく御批評下さい。
人も団体も大きなことを思い描き、手厳しく叩かれることでしか成長しないのですから。

言い尽くせないことも多いのですが、長文になりすぎます。
これをもって1年の振り返りとさせていただきます。

それでは今年も残すところ2日。
皆様、よいお年をお迎えください。

【釜】

今年最後の久留米市内K小学校公演

昨日は、久留米市の耳納北麓K小学校にて今年最後の巡回公演でした。
作品は「どんぐりと山猫というはなし」です。

早朝7時から体育館にて舞台仕込み。
11時から公演。資材搬出時には雨にたたられましたが、とてもよい公演でした。

一時の寒波はやや緩んだとはいえ、寒さが厳しい体育館です。子どもたちが集中して観てくれるかな?という心配はありました。
ところが、どうしてどうして。体育館は子どもたちの期待でパンパンに膨れ上がり、演じ手と子どもたちの間に、くっきりと呼応関係が生まれていたのでした。

受け入れのお世話をいただいた先生方、ありがとうございました。
私たちも、子どもたちによい鑑賞体験を保障できたことに、ホッと一安心しております。
演劇(人形劇)という表現が、人と人の「間にあるアート(芸術)」であることを、改めて実感した巡回公演でした。

さて2022年最後の公演を終えて、2022年の劇列車事業の結果は以下の通りとなります。

■計15回の公演(うち「どんぐりと山猫というはなし」13回、「ちょうふく山のやまんば」2回)。
■計4回のワークショップ(「親子であそぶ人形劇がっこう」4回)。
■演劇と教育研究委員会開催3回。
■ボランティア研修会開催2回。

計24回(月平均2回)の様々な事業を開催しました。

振り返ると、毎年のことですが「駆け抜けた2022年」というのが、素直な実感です。
その過程でたくさんの素敵な方々と出会いました。

何が素敵なのか。
「日本人や日本社会の劣化」という言葉が、様々な場で囁かれるようになっています。
しかし全体が劣化するに従って、輝きを増す人々がいます。
様々な現場において、崩壊していく社会を新しく再生する実践に骨身を削る人々。
そんな彼らが素敵なのだと思います。
私たちの未来は、このような人々の中から生まれてくるのではないでしょうか。

かつては未知だったたくさんの方々。
そんな方々と出会えたことは、私たちにとって幸せなことでした。

このあたりのことは、近々恒例の「1年の振り返り」で述べてみたいと思います。

とりあえず2022年全事業を終えたところで、各事業にてボランティアとして関わっていただいた皆様、様々に事業を支えていただいた皆様、私たちに刺激的な学びの機会をご提供いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。

【釜】

年内のワークショップ、終了

昨日は筑後地区で初雪となりました。このあたりではめったにお目にかかれない雪景色に、非日常の美しさを感じます。
そんななか、朝倉市甘木で開催した『親子であそぶ人形劇がっこうinあさくら』。
お足元の悪い中参加してくださったみなさま、ありがとうございました。
また、ボランティアのT様、路面状況が不安な中に会場まで来ていただいてお手伝いくださったこと、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

今年度のワークショッププログラムは、三匹のこぶたを題材に人形劇あそびをやってみること。
昨日のワークショップでも、特徴ある人形たちが出来上がり、個性あふれるユニークな遊び方がキラリと光っていました。
私たちの想像を超えて、独創的に遊びだす子どたちと、そのあそびを支える保護者の皆様。
人形劇あそびを通じて、親子でふれあうひとときを楽しんでいただけていますと幸いです。

さて、年内のワークショップはこれで終了。
年が明けて3月には、子どもたちだけで人形劇にチャレンジしてみる『こども文化がっこう』を予定しています。
開催地は久留米。3年ぶりの開催です。

【尚】

チャレンジ体験塾きたの公演

昨日は、北野生涯学習センター「チャレンジ体験塾きたの」での「どんぐりと山猫というはなし」公演。

寒波が到来したあいにくの天気でしたが、たくさんの方々(大人も子どもも)に御来場いただきました。
お世話下さいました地域指導員K様、実行委員会の皆様含めまして、改めて厚く御礼申し上げます。
対話のひろばと人形ふれあい体験までふくめて、フルバージョンに近い公演でした。

さて、「どんぐりと山猫というはなし」は、一昨年夏初演の「どんぐりと山猫」を改作した現バージョンを、今年2月に三潴生涯学習センターで初演したことから始まりました。
以来、12回の上演を終えました。
次21日の小学校公演を終えると、13回目を終えることになります。
そして1年ぶりに、現バージョンの全面改訂作業に入ることになります。

この作品で到達した表現水準と私たちの演技への自覚には著しいものがありました(自画自賛ですね)。
しかしまだ先の表現にチャレンジ出来る、まだ先の表現に到達しなければならないと、全面改訂に入ります。

演劇(人形劇)での主題の呈示は、ドラマ(ある出来事の生起)によってなされるものです。
逆から言えば、ドラマの展開の中にしか劇の主題は見えてこないのです。
現バージョンではそこに弱点が見え隠れしています。
だからこの改善を図ることで、見ていただける観客の皆さんと、より濃密な場を創りたいと思っています。

なぜなら、演劇(人形劇)という芸術は、人と人の間に生まれる「間のアート)以外の何者でもないからです。
どう濃密な場を創りだせるか?
そこが最も肝要なポイントになります。

たかがと思わないで下さいね。
たかがそのくらいのことであることを否定はしませんが、たかがそのくらいのことのために、人はしのぎを削るのです。
それが表現の厳しさというものです。

もちろん現バージョン最後の上演となる21日の小学校公演では、今出来る力を出しきって全力で取り組みます。

そして全面改訂版(新バージョン)は、約一ヶ月半の作業によって生まれかわり、2月名古屋ひまわりホールで初演を迎えます。

2022年も残すところ10日余り。
年末から始まる私たちの新バージョン創造の旅は、私たちに果たしてどのような地平の景色を見せてくれるのでしょうか?

人と人の間から生まれる感性と知性を動員しながらの、楽しくもギリギリと苦しい旅の始まりがいよいよ近づきました。

【釜】

3月おやこ人形劇場演目は?

本日はお知らせです。

2023年、3月5日(日)おやこ人形劇場(石橋文化センター小ホール)は、演目「どんぐりと山猫というはなし」で開催決定しました。
以上、お知らせいたします。
多忙に紛れ、開催告知が遅れましたことを御詫び申し上げます。

さて、10月に一度お知らせしましたように、本来ならば「さちのまだ見ぬ物語」でお届けするところでした。
急遽P新人賞最終選考会出演が決まりましたので、現在「どんぐりと山猫というはなし」を全面改訂しております。
ですから、おやこ人形劇場はこの作品での上演となります。

「もう見たよ」という方もいらっしゃると思います。
ですが、「社会の見えない問題」を一層シャープに描いているつもりです。ストーリーも一新されております。
御期待いただければと思います。

「社会の見えない問題」とは何か?
ここでいうそれは、「一層過酷に進行しながらも見えなくされている競争原理」のことです。

「いっそう過酷に」と述べるのは、この競争原理が、人間の人格全般を市場価値で計り競争させようする競争原理であるからです。

人格全てが競争にさらされるなら、競争からの精神的解放区は存在することが出来ません。
出来るのは、自分を市場価値なきものと否定してくる競争原理を、逆に否定しぬくことのみ。
相手が自分の全てを計ってくるわけですから、計られる側は、その全てを否定しぬくこと。

この表現、難しく感じられる方もいらっしゃると思います。

少し補足します。
私たちは、10月パペットシアターPROJECTで、この競争原理の犠牲になった子どもたちと出会いました。
私も長年学校の教師をしていましたから、不登校の子どもが学校からいなくなるのを何度もみてきました。
そんな子どもたちがフリースクールに行ったと聞けば、「よかったね」と胸を撫で下ろしてきたものです。

10月にパペットシアターで出会った子どもたちの姿は、学校からいなくなった後の子どもの姿でした。
そこには学校の教師たちが滅多に目にしにくい、子どたちの姿がありました。
とても驚き、何だか嬉しくなりました。

パペットシアターでは、前述競争原理が、感受性も知性も豊かな子どもをどのように押し潰してきたかを、つぶさに感じとることが出来ました。
フリースクールは学校でない分、子どもの心につけられた心の傷がよく見えたのでした。
これが驚きだったのです。

けれども、いつまでも子どもはショボくれてはいません。どっこい子どもは生きています。
月日を経るに従って、生命力に溢れた存在になっていきます。

「競争原理なんかくそくらえ!」

自己に内面化された競争原理をそれぞれのやり方で突破したときに、子どもたちは、逞しくもふてぶてしく開き直り始めるのです。

「ボクはボクなりに、アタシはアタシなりに生きていく」と。

そんな逞しい子どもたちの姿も見せてもらいました。
これが嬉しさでした。

それでよいのだと思います。
過酷に働く競争原理にのれる子はいい。のれない子は競争原理なんか蹴飛ばせばいい。
こう述べると、「どんぐりと山猫というはなし」が何を描きたいのか、少しは分かっていただけますでしょうか?
隠された競争原理によって傷つけられた心の回復を描きたいのです。

この改訂版は、10月のフリースクールの子どもたちとの出会いから生まれたと言って過言ではありません。

とはいえ、それを人形と人間の表現で作品に仕立て直していくことは…。
大変な作業であることは間違いありません。
どうぞ御期待いただければ幸いです。
具体的御案内は後日におこないます。

【釜】

子ども若者応援基金クラウドファンディング!

今日は、ブログをお読みの皆様に、ちくご川コミュニティ財団様のクラウドファンディングを紹介致します。
お読み下さった方はこの稿を周りの方々に拡散して、出来るだけ広めていただければ幸いです。

さて、市民財団であるちくご川コミュニティ財団様が、子ども若者応援基金のクラウドファンディングを、昨日12月2日より開始されました。
60日で200万円を目標としてあります。
まずはお知らせいたします。

市民財団とは、市民自らが立ち上げた財団です。
行政やその外郭団体ではありません。
市民が市民のために立ち上げた財団、それが市民財団だと理解しております。

また、ちくご川コミュニティ財団様が立ち上げた子ども若者応援基金については、9月にこのブログでも紹介しました。
あらためて申しますと、或る市民の方の心ある遺贈によって設立された「困難を抱える子ども」のための基金です。
私たち劇列車は、この基金の支援を受けて、パペットシアターPROJECTを立ち上げることが出来ました。

私たちのパペットシアターような「困難を抱える子どもへの人形劇観劇支援(文化体験支援)」に、理解のある自治体がはたしてどれ程あるのでしょうか?甚だ疑問です。
そのような文化支援の必要性を真剣に考えている市民も、まだまだ少数です。

私たちは、ずっとパペットシアターPROJECT事業の必要性を痛感してきました。
ですが、適切な助成システムと適切な支援に出会うことが出来ず、ずっと実現出来ないままだったのです。

それが2020年。
設立されて間もないちくご川コミュニティ財団様から、子ども若者応援基金の助成を受けることができたのでした。

「やりたくても出来なかったことが出来るようになる!」

どんなに嬉しかったことか。
それが私たちのターニングポイントになりました。
心強い支援を受けて、どんなに励まされたことでしょう。
財政的な支援だけではなく、パペットシアターPROJECTの意義に対する温かく深い御理解をいただいたことが、私たちをどれ程支えてくれたことでしょう。

パペットシアターPROJECTは、こうして始まったのです。
子ども若者応援基金なくしては、この事業を始めることが出来なかったと思います。

この助成を受けて活動してある他の団体様も、きっと私たちと同じような経験をされてあるのではないでしょうか。

しかし、残念なことに遺贈を原資にした基金は、いつかは底を尽きます。
ですから、ちくご川コミュニティ財団様は、今回クラウドファンディングによって基金の持続を図ってあるのだと思います。
またそれが、遺贈をされた方の遺志を生かす道でもあるのでしょう。

市民で立ち上げた市民財団が、地域密着型の市民活動を支え、困難を抱える子どもたちへ必要な支援を届ける。
そのための子ども若者応援基金です。
そのためのクラウドファンディングです。
価値ある大切なクラウドファンディングです。

このクラウドファンディングが、成功に終わることを願ってやみません。

ブログをお読みの皆様に、子ども若者応援基金クラウドファンディングへの御協力をお願いいたします。
クラウドファンディング詳細はこちらから。

【釜】