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福岡の久留米の地での人形演劇

柿の実が薄くオレンジ色に色づいています。
毎日30度を越える毎日ですが、秋がだんだんと姿を見せてきました。

さて、秋が来ると冬がやってくる。

季節変化のスピードと新作「さちの物語」完成に向けてのスピードがほぼ一致したまま、毎日を送っています。
ですから、季節の変化は私たち上演班に焦りをもたらします。
稽古が加速化しています。

でも。

4時間稽古するとすれば、1時間はいつもミーティング。
稽古予定の各シーン各プロットで、「何を、どうやって表現するか」を納得するまで細かい打ち合わせをします。そして、やおら稽古開始です。

気がつくとそこまでで1時間がたっている…。
そんな感じです。
稽古時間とは、何をどうやって表現するかの実験工房でもあるのです。

さて、現在「さちの物語」は第2クールに突入。
物語と各シーンが輪郭を現して来ました。
第2クールでは、輪郭をくっきりと描き、それをブラッシュアップするつもりです。

クライマックスは、主人公さちが仮面をとるところ。
このドラマは、被虐待児童さちが身を守るために被ったお面をとる物語です。

被虐待経験をお持ちの方は皮膚感覚でお分かりでしょうが、虐待を受けると、人はお面を被るようになります。
そのお面で身を守ろうとしますが、それでは回復に結びつかないといえます。
ですから、この物語はお面をとる=回復=希望の発見の物語なのだと思っています。

さて、まとめに入りましょう。
私たちが日々福岡の久留米で創っている人形演劇。
それは、俳優劇と人形劇を組み合わせ。
それは、社会との緊張関係を失わずに表現をつくること。

私たちは私たちを苦しめてきたものの正体を見極めたい、その正体を見極めてもっと深く息をしたい。
その喜びを他者と共有したい。
だから人形演劇という手法を、自分たちで編み出しつつあります。

いま、福岡の久留米で姿を現しつつある「さちの物語」。
毎回3時間†6時間の稽古を、知的に、スリリングに、時に楽天的に、時に絶望して、創っています。

最後に補足ですが。

作品づくりの秘訣は、うまくいかない時に、それを見てみぬふりして回避する要領よさではありません。
「うまくいかない時の絶望とうまく付き合う」ことだと思っています。

そうしないと、作品の質があがらない。
そうしないと、作品が途中頓挫してしまう。

さあ、頑張っていきましょう!

【釜】

遺贈寄付シンポジウム

桜の葉が散りはじめました。残暑の中にも、そっと秋が訪れています。

さて、一昨日の9月9日土曜日は、ちくご川コミュニティ財団様主催の遺贈寄附シンポジウムがありました。

劇列車は、昨年子ども若者応援助成を受けて、パペットシアターPROJECTを3ヵ所で開催しました。
そのご縁で、パペットシアターPROJECTの報告機会をシンポジウムの中でいただきました。
お陰様で、たくさんの方々にこの事業の成果を伝えることが出来て、嬉しく思っています。
お聞きくださいました皆様、私たちに声をかけてくれた皆様に、あらためてお礼申し上げます。

さて、遺贈寄付シンポジウムで私たちが得た成果、それは次のようなことです。

それは…。

様々な場所で、様々な人たちが、困難を抱えた子どものために奮闘してあるということ。
その発見です。

当たり前のこと言うなと思われるかもしれませんね。
私たち含めて昨年の助成を受けた団体から2団体、今年度助成を受けた団体6団体、合わせて8団体が一同に会したところで、私個人はあらためてそう思いました。

私たちもそうですが、活動を続けると、どうしても、のっぴきならない壁にぶつかります。
それを一つひとつ乗り越えながら活動は持続していくのです。

9月9日に一同に会した各団体様もそうかもしれません。
だからか、発言された皆様の一つのひとつの発言の背後に、壁を乗り越えてきた重みと、支援を続けてきた困難を抱えた子どもの息づかいが感じられるのです。

だから心の琴線に触れてくるのです。
だから爽やかな風がふいてくる感覚が生まれるのでしょう。

参加された皆様の今後の御奮闘をお祈りするとともに、私たち劇列車も頑張っていきます。
今後、お互い何らかの形で連携が広がっていけばよいですね!

最後に。

こういう場を設定されたちくご川コミュニティ財団の皆様に感謝するとともに、遺贈寄附をされた故F・S様の御意志に感謝申し上げます。

想いがつながり、それが広がることから生み出された奇跡。そんな素晴らしさを感じた1日でした。

【釜】

人形演劇さちの物語稽古の近況は?

9月になりました。少しずつ朝晩が涼しくなってきています。

今日は新作「さちの物語~貧乏神とさちの物語」の進行状況の報告です。

繰り返しになりますが、初演は12月17(日)名古屋ひまわりホールです。
P新人賞2022受賞記念公演となります。
これはなかなかのプレッシャーですが、それもいい作品を生み出すための試練と思い、日々頑張っていますよ。

現在は、立ち稽古第1クールが佳境です。
来週中には、第1クールを終えて、第2クールに入れそうです。
第1クールを終えた各プロットがそれぞれに魅力を放っています。
いや、この段階で魅力を放たないプロットがあれば、ブラッシュアップのやりようがないのですから、これは当たり前。

長い脚本の練り直し期間をかけた脚本です。
脚本初稿完成から、読み稽古や半立ち稽古を断続的に挟みながらの書き直し(練り直し)期間は、約1年間。

その甲斐あってか、ドラマ自体が強靭なものになっています。
かつ魅力的なものに。

この作品のいくつかの特徴をあげてみます。

■主人公の中学3年生「さち」の心が、さちの小学校4年生時のさち(人形)との対話で表現されています。
舞台空間を緊張させる対話(さちの自己内対話部)が生まれています。

■ドラマの展開では、民話「貧乏神と福の神」のラストシーンの3回にわたる反復が行われます。そして同じラストシーンが、少しずつ変化していきます。
それは、さちの心の変化でもあるのです。
人形劇表現独自の面白さが、だんだんと生まれています。

■そのドラマを支える小道具が、退部届とノート、そして仮面。この三つが、ドラマを効果的に支えそうです。
最も仮面のデザインは試行錯誤中ですが…。
大切な試行錯誤です。

さて、本作品製作にあたり、いろんな方々と対話する機会を得てきました。
そこで見えて来たことは…。

この作品はDV被害者「さち」の被害そのものを描いているのではないということです。
DV被害者「さち」の生きがたさと回復を描いた物語なのです。
そうやって、静かにDV被害の深刻さを淡々と描き出しています。

もちろん、DV被害の影響は長く長く続きます。
しかし、主人公さちは、確かに、長く続いていくであろう回復のきっかけを掴むのです。
そんなドラマであることが、はっきりと見えてきています。

決して声高にDV被害を告発する作品ではありません。
さちの生きがたさ(人間関係づくりの困難さ)から、DV被害の深刻さが見えてくる作品です。

劇列車作品の中では久しぶりに、俳優劇に最接近した作品でもあります。

皆様、どうか御覧ください。久留米での初演は、来年3月。石橋文化センター小ホールです。

【釜】