昨日で夏の巡回公演を無事に終えました。
そのラストステージは城島町の学童保育所様。「一郎くんのリスタート」での上演でした。
筑後川の堤防道をずっと下流の方へ。
車を走らせて、向かった先は美しい田園に囲まれたコミュニティセンター。
大川市との境に近いところです。
コミュニティセンター職員の方の温かい心遣い、支援員先生の心のこもった子どもたちへの語りかけ。
素敵な1日になりました。
特に私たち上演班にいただいた「素敵な職業(上演活動)ですね」との言葉。それは、滅多に言われたことのない言葉です。
私たちのしごとの意味を再確認できた嬉しい一言でした。
さて、夏の巡回公演の内訳は、「一郎くんのリスタート」上演が4ヵ所、ミニ人形劇上演と人形展示が1ヵ所です。
上演会場は、各コミュニティセンターのホール3ヵ所、公共ホール会議室1ヵ所、小学校体育館1ヵ所です。
そして私たちは、今夏の巡回公演で、ある大切な気付きを得たのでした。
それはこういうことです。
巡回作品「一郎くんのリスタート」は、P新人賞2022受賞作です。
日本児童青少年演劇協会主催の劇作家養成講座でも評価を得た作品でもあります。
そのような完成度の高い作品を、巡回先に持ち込むことで見えてきたことは?
それは「作品は必ずしも分かりやすいとは言えない。だけどそれでいい」ということ。
「自信を持って臨んでいい」ということ。
小学校1年生に、この作品の主題を捉えてもらうのは、確かにムリがあるかもしれませんね。
しかし侮ってはいけません。
言葉に出来なくとも、直感的に捉えている可能性は否定できません。
また作品の完成度で、表現それ自体を楽しんでもらえます。
そんな様子がどこでも見られました。
これも鑑賞の一つのあり方だな…。
大切なことは、見てくれた皆さんがそれぞれに満足することだな…。
そう深く確信させられた今夏の巡回公演でした。
いささか乱雑なまとめ方ですから、意が伝わりにくいと思います。
ですがこの気付きは、私たちにとって大切な気付きでありました。
なぜなら「難しい」という言葉の方が、私たちかには聞こえてきやすいからです。
それは私たち上演班にも、微妙な影を落としてきます。
「難しい…」。
この言葉は、大人の方のほうがよくおっしゃいます。
もしかしたら、世の大人たちの多くは「分かりやすいもの」「楽しいエンターテインメント」を求めすぎているのかもしれませんね。
そしてその尺度に合わないものを切って捨てているような…。
そんな娯楽の消費者になることに、馴れてしまっているのかもしれません。
でも。
もし「楽しいエンタメ」しか存在しない社会になったら…。
それこそつまらない。
大切なことは、いつも複雑な顔と陰影を持っています。
それを可能な限り伝える努力をして、それでも残ってしまう「分かりにくさ」。
それは、そもそも立ち止まって考えるに値する大切なことが、おしなべて複雑な陰影を持っているからではないでしょうか?
そんなことを考えました。
私たち上演班は、いつも1回1回の上演を振り返りながら学んでいます。
そして季節毎の単位でみると、いつも認識の次元を刷新しています。
今夏、巡回先でお会いした皆様、大変お世話になりました。
どこの会場でも、皆様と交わしたさりげない会話から、私たちは多くの発見を得てきたのでした。
厚くお礼申し上げます。
【釜】
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