演劇と教育研究委員会開催

菜の花も八分咲きですね。めっきり日が長くなりました。

さて、一昨日は演劇と教育研究委員会2月例会(通算9回目)でした。
報告は「言葉を紡ぎ自己を解放する野球部員たち~短歌・俳句の創作を通して~」(N短大付属高校城尊恵さん)です。

報告について一口にざっくり言うと、とても骨太でシンプルな報告でした。
一晩飲み明かしながら、酔いつぶれるまでフリートークを続けたい。
そう思わせるような魅力に満ちた報告でした。
きっと、そうやって飲む酒は美酒でありましょう。

(感覚的な表現ですみません。
そんな楽しみ方をしたいほど魅力に満ちた実践だ。そう言いたいわけなのです)。

もっと論理的に述べてみましょう。

高校生たちの心の中に渦巻いているもやもやに、高校生自らが言葉を与えていったとりくみといってもよいかもしれません。

自己を掘っていき、言葉を発見していく高校生の作業を励ました取り組みと言うことも出来ます。
借り物の言葉でなく、自分にとっての本物の言葉を発見していくことを促した取り組みともいえます。

自分にとっての本物の言葉…。

簡単に言われがちですが、それを見つけだす作業(自己内対話)をすることは、どんな場合でもとても苦しいものです。
とんでもなく苦しいことなのです。

自己の内側に潜っていって、得体のしれない何かに言葉を与えていく(言い換えると言葉を発見していく)作業は、突き詰めていかなくては出来ないのですから、とても苦しい。

突き詰めて、突き詰めて、もうこれ以上ムリというまで突き詰めて。

何が苦しいのかと言いますと、突き詰めることがとても苦しいのです。
でも突き詰めて言葉を発見した時、表現はシャープになり、苦しさは楽しさへと急速に変わります。
その意味で、苦しさと楽しさは裏表の関係にあります。

私は、すぐに「楽しさ」をあげつらう人々に違和感を持ってきました。
そんな楽しさは、有害無益だと言ってきました。
なぜなら、苦しさと裏表の関係にない「楽しさ」は、本物の楽しさではないからです。

城さんは、そんな本物のを楽しさを楽しむ高校生たちを育てているのです。
彼女は、くっきりとした輪郭を持って立っているだけ。
そこに何か複雑な技が駆使されているわけでなく、何か魔法があるわけでもない。
ただ「この俳句作品の中にあなたはいるの?」と、高校生たちに問うているだけ。
その姿は「くっきりとした輪郭を持って立っている」としか表現しようがありません。

でも、苦しさと裏表の関係にある楽しさを知った高校生たちは、勝手に言葉を突き詰めて、鋭い表現をつくりだしていくのですね。
余分な贅肉のないとても爽快な実践でした。

こんな言い方で、城先生の実践の魅力は伝わったでしょうか?
いささか心もとないのですが…。
あえてまとめるならば、表現活動体験のもつ素晴らしい力を、あらためて再確認することが出来た報告でした。
城先生、有意義な学びの場を御提供くださり、厚く感謝申し上げます。

次回演劇と教育研究委員会は、4月例会となります。
劇列車からの「パペットシアターPROJECTにみられるこどもと大人の変容」について報告します。

皆様、4月28日(日)演劇と教育研究委員会4月例会に参加してみませんか?

【釜】

2時間は短い?長い?~親子であそぶ人形劇がっこうinちくしの終わりました

昨日は親子であそぶ人形劇がっこうinちくしの。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
3連休最終日が、親子の皆様にとって素敵な1日になっていましたら幸いです。

このワークショップは2時間のプログラムです。簡単な工作から遊んでみるまで。
終わった後の感想には、子どものみなさん大人のみなさん、それぞれのたくさんの気持ちをいっぱい書いてくださっています。
「おもしろかった!」「家でもまたやってみたい」「子どもが自由な発想をしてくれて嬉しかった」「想像することの奥深さを感じた」
言葉に書ききれない気持ちは、身体で表情で私たちに伝えてくれます。帰り際、人形劇あそびでやっていたことを身体表現で表したり。

最近よく、大人の感想の中にとても興味深いものが見受けられます。
「2時間という短い時間でこんなに楽しめるなんて」
「2時間という長い時間をこどもと遊ぶなんて、めったにない機会になった」

前者の感想、全くもってそのとおりです。
人形をつくるところから始めて人形劇であそんでみるところまでを2時間でやってみるというのは、とってもとってもとっても短いのです。
2時間で親子のみなさんに人形劇の面白さをどう体験してもらうことができるのか…プログラムの組み立てや材料選び、工作手順、とても試行錯誤しています。
誰でも参加できる親子向け自主ワークショップをはじめた10年前は、『人形劇をやるためには時間がかかる』ということに理解が得られず苦労していたものです。(体験された方々にはいうまでもありませんが、この『時間がかかる』ことに人形劇の魅力が詰まっているのです。詳しくはまた改めて。)
2時間を短い時間と評価してくれた前者の感想に感慨深く思いました。

後者の感想は、わりとよく言われます。
”わりとよく言われる”ということに、保護者の方の日々の忙しさが想像でき、胸が締め付けられます。
毎日の暮らしの中にある「余白」が、とても小さくなっていると感じます。この「余白」のなさが、狭量で排他的な人間関係につながっているように感じてなりません。
では、「余白」をつくるために保護者ががんばればいいのか?いえ、そうではありません。
精神的「余白」をつくりだすことは、いち個人の努力だけでなんとかなるものではないのです。

人形劇ワークショップにおいて、2時間はとても短い。
でも、毎日一生懸命くらしている親子のみなさんにとって、2時間は短いのか?

時間の感じ方はひとそれぞれだと思います。短く感じる方、長く感じる方、どちらの感じ方でも全く問題ありません。
いただいた感想の裏側に、参加された親子のみなさんの、『毎日のがんばり』が透けてみえる。
だからこそ、わたしたちのワークショップが、親子の皆様にとって素敵な1日になっていましたら、こんなにうれしいことはありません。

【尚】

バペットシアターPROJECTで福岡市へ

立春も過ぎ、梅も満開ですね。
春ももうすぐです。

さて、昨日は2023年度最後のバペットシアターPROJECTでした。
福岡市のふくふくプラザにて、フリースクールみんなの学び館様と、フリースクールコピカ様の子どもたちが参加してぐれました。
小学生から中学生まで。

プログラムは、以下のとおりです。
①人形劇ワークショップ。
②「一郎くんのリスタート」観劇会と対話のひろば。
以上のプログラムで、10時半から14時まで。

特に人形劇ワークショップは、人形を使ってのインプロ(即興)にチャレンジしました。

また「対話のひろば」は、「一郎くんの出口はどこだったのだろう?」「自分の出口はどこだろう?」というテーマ設定を設けて行いました。
グループに分かれて、あちこちで劇を観た小学生、中学生たちが、思い思いのことを活発にしゃべりあっていました。
まるで、あちこちで小鳥たちがさえずりあっているような…。
そんな心地よい時間でした。

今回私たちと連携いただいたみんなの学び館の先生方、そしてコピカの先生方、ありがとうございました。
また、ボランティアでこの取り組みを支えていただいた皆様にも御礼申し上げます。

さて不登校の子どもたちは、不登校になった途端に孤立してしまいます。

何に自分が傷ついているのかはっきりとはわからなくとも、確かに深く傷ついているのです。
それは、いじめであったり虐待であったり、息苦しさであったり…。
様々な理由があり、それらが複合してしまい、本人も理由がわからなくなっている場合もしばしば…。
そんなことを聞いたりします。

大人からするならば、不登校の原因を究明することも大切なことでしょう。
しかし、こどもからするならば、それよりも不登校の出口の方が、もっと大切なことのように思えてなりません。

不登校になりたくてなるこどもたちはいません。
学校に行けなくなることで、最も苦しんでいるのは、こどもたち自身です。
不登校は、病気でもサボりでも、問題行動でもないのです。
あえて言うならば、「避難」なのかもしれません。
これ以上はもうムリという避難。
それは大切な避難なのではないでしょうか?
このことに異論を持たれる方もいらっしゃると思います。
ですが不登校の現実にぶつかると、私にはそう思えてならないのです。

そんなこどもたちが傷ついた心を回復して、再びつながりを回復していくことこそが、未来あるこどもたちには大切なことではないでしょうか?

不登校=孤立の図式は、なんとしても崩したいものです。
フリースクールで元気に学んで遊んでいるこどもたちをみると、そんなことを思ったりします。

その文脈で物事を見つめるならば、本ブログでも紹介してきました「不登校の子どもに多様な学びを保障する給付型奨学金」の重要な必要性を、あらためて痛感します。

お金に余裕があるなしで、不登校のこどもの学びが開けたり閉ざされたりしてはならないのです。

最後になりますが、今年度のバペットシアターPROJECT(困難を抱えたこどもへの文化体験支援)は、これで終了となります。
助成団体様への報告書づくり等の作業は、今からになりますが…。

そして2024年度には、5団体様と連携してバペットシアターPROJECTを進めることになります。

私たちは、この事業でたくさんの大切なことを学んできました。
そのなかで一番大切なことは、困難を抱えた当事者から出発するということです。
これは、バペットシアターPROJECTの最大の肝だと思っています。
それらの学び全てを、来年度に生かしていきたいと考えています。
来年度連携団体の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【釜】

チケット販売開始。3/17「さちの物語」

P新人賞受賞記念久留米公演「さちの物語」のチケット販売がはじまりました。
石橋文化センター、久留米シティプラザ情報サテライト、弊団体ホームページで販売しております。
公演詳細はこちらからチケットお申し込みはこちらから

「さちの物語」は中学3年生の女の子「さち」が主人公です。中学3年生といえば、14~15歳ですね。
さちは、DVが吹き荒れる家庭で育ちます。父が母に暴力をふるう光景が、彼女にとっての”日常の風景”なのです。
10歳のころに目撃した”面前DV”が、特にさちの心に印象深く残ります。その日のDVのきっかけは、学校でさちが受けた”いじめ”でした。

――DVを受けたら、すぐに周りにSOSを。
その通りですよね。
でも、ちょっと想像してみてください。

――学校での自分の行動が原因で、DVを受ける母。
そう感じている「さち」が、学校の先生に相談できるのでしょうか。

「さち」の”こころ”はどう動くのか。
幼少期より繰り返し傷つけられている”こころ”を回復させるとは、どういうことなのか。
ご覧いただいたみなさんに、たくさんのご感想とご意見をいただけたら嬉しく思います。

さて、この作品の初演は愛知県名古屋市にある「ひまわりホール」で行いました。
初演に先駆け、お申し込みいただいた方々に作品を観ていただく機会を設けました。
観ていただいた方のお一人、竹島由美子様からの感想を一部引用させていただきます。全文は、チラシ裏面に記載しております。

『やがてその言葉はさち個人というよりも、いまの社会の中で「生き辛さ」を抱える多くの子どもたちの声に聞こえてくる。
「負けるな、さち!」と観客席から応援していたはずなのに、いつの間にか舞台上のさちから、背中を押されたような爽快感を覚えた。
きっと誰もが勇気づけられる作品だ。』

どうぞ皆さま、この作品を観に、ぜひお越しください。
公演詳細はこちらからチケットお申し込みはこちらから

【尚】

WAM助成、採択されました!

2月です。立春ですねえ。
ちくご川コミュニティ財団様のクラウドファンディングは、大成功をおさめました。
この取り組みの画期的意義に、強い感銘を受けております。

さて、弊団体に対して、2024年度パペットシアターPROJECT(困難を抱えるこどもへの文化体験事業)への助成が採択されましたこと、皆様に御報告申し上げます。
助成は、独立行政法人福祉医療機構(WAM)様の子どもの未来応援基金よりいただくことになります。

その結果、2024年度は予算規模で前年比の6倍強、事業実施回数で1,6倍でパペットシアターPROJECTに臨むことが出来るようになりました。

事業回数の伸びに対して、予算規模の伸びの方が多いのは、より質の高い上演にするための上演環境整備(主として照明を充実させるためのスタッフ費用機材費用、質の高い上演を可能にするための会場選択)にあります。

また2024年度に合計5回に増加するパペットシアターPROJECTです。
それを責任を持って支える事務局スタッフ人件費の新設、及び地域円卓会議開催、報告集発行までを予算計上したことにもあります。

えっ?地域円卓会議って何?

そんな疑問を抱かれる皆さんも多いのではないでしょうか?

それは地域の抱える社会課題を、関連する分野の方々が一同に会して集まり、話し合うフォーラムのこと。
そのことで抱える社会課題の本質を浮き彫りにし、解決策を探りあうこと。
市民も参加出来る開かれたフォーラム、それが地域円卓会議です。

私たちは、様々な困難を抱えるこどもたちに共通する課題を探りあい、市民の皆様と共有しあいたいと考えています。
そのための地域円卓会議開催なのです。
2023年度夏に開催した「パペットシアターPROJECT報告会」を拡大発展させようと、ねらったフォーラムでもあります。

私たちは、数々の支援現場を訪れてきたなかで、こどもたちにある共通した課題があることを感じとって来ました。
それを市民の皆様と共有しあいたいと思っているのです。
まずは共有しあう、それも共感的に。

では「共感的に」とはどういうこと?
このことはとても大切なことですが、ここでは置いておきましょう。
ただ、周囲の共感的な理解こそがスタートなのだと強く感じています。
なぜなら、そこから少しずつ地域が変わりはじめるのですから。

パペットシアターPROJECTは、2020年度にスタートしました。
最初は、今よりもっと単純なプログラムでした。
しかし、連携団体様との膝詰めの話し合いや、様々な困難を抱えたこどもたちとふれあう中で、単純なプログラムも徐々に進化していきました。

何しろ限られた時間の中で、最大の効果をねらう必要があるのです。
そして、パペットシアターに訪れたこどもや親子の皆様が「来てよかった」という時間にすることに、全力集中しなければなりません。
それが、まずは最大の眼目になるのです。

私たちも限られた資源と能力をフル稼働させて臨んで来ました。
その中で、プログラムも徐々に進化し、複雑になってきたのでした。

さて尻切れトンボかもしれませんが、この辺りでまとめに入りましょう。

とにもかくにも、助成を受けて2024年度パペットシアターPROJECTを稼働させることが出来るようになりました。
ホッとしています。
新しく連携をすることになる団体の皆様、従来からの連携が続く団体の皆様、2024年度ではよろしくお願いいたします。

またWAMへの助成申請にあたり、貴重な御助言をいただいたちくご川コミュニティ財団様に感謝申し上げます。

【釜】

クラウドファンディングもう少し!

もう梅も咲きました。少しずつ春が近づいています。さて、本日は(1月28日)はちくご川コミュニティ財団様の「子どもの多様な学びの場を保障するための基金」キックオフイベントに参加してきました。
私たち自身の深い学びにつながった、とても有意義な集いでした。

さて、このブログでも以前御紹介しましたが、ちくご川コミュニティ財団様と西日本新聞が共同で進める「子どもの多様な学びを保障するための基金」クラウドファンディングが、いよいよ大詰めになりました。

この基金は、フリースクールに通学するための給付型奨学金制度を、市民の力でつくりあげようという基金です。
目標300万円。

クラウドファンディング期間は1月31日までで。
残すところ僅かです。
目標額達成までにあと一歩です。
皆様、クラウドファンディングに、どうか御協力いただければ幸いです。

不登校の子どもたちに多様な学びの場を保障するということは、多様な出口を保障するということです。
私たちは「一郎くんのリスタート」で、不登校の一郎くんなりの出口を提示しましたが、「フリースクールで学ぶ」というのは、現実の具体的な出口の一つなのだと思っています。

その出口が、経済格差等を理由として閉じられてはなりません。
そのための給付型奨学金を、市民の手で作り出そうというのが、今回のクラウドファンディングです。
ほんとうに画期的な取り組みなのです。
この画期的取り組みを、なんとしても成功させたいものです。

このブログをお読みの皆様、このクラウドファンディング成功のための最後のひと押しに、是非お力をお貸しください。
クラウドファンディングについては下記をクリック。
子どもの多様な学びの場を保障するための基金を立ち上げたい | 一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 (congrant.com)

【釜】

保育園公演終わりました

この冬一番の寒波到来。
しかし、冬至の頃とくらべて日没時間もだんだん延びています。
もうすぐ春ですね。

さて、昨日は厳しい寒波の中、久留米市内安武保育園で「ちょうふく山のやまんば」を上演しました。
午前中に上演を終了させるために、まだ真っ暗な中での機材搬入開始でしたが、園児の皆さんにも楽しんでもらえ、疲れも吹っ飛びました。

上演後に、年長さん年中さん全員に人形に触れてもらえる時間もとることが出来ました。
とても嬉しい時間でした。

園児の皆さんの給食のおすそ分けもいただき、おいしくいただきました。
おでんだったのですが、なんと!大根は園児の皆さんが育てたものだそうで、こちらもびっくり。
それほどに立派に育った大根だったのです。

今回の上演にあたりまして、保護者会のM様には大変お世話になりました。行き届いたお世話をいただき、まだ暗い中での駐車から機材搬入開始まで、戸惑うことなくスムーズに流すことが出来ました。
ありがとうございました。

また園長先生はじめ、保育士の先生方にも大変お世話になりました。
温かいおもてなしに、こちらも心がほっこりとしました。
ありがとうございました。

さて、次は2月8日のパペットシアターPROJECTです。
福岡市のフリースクールみんなの学び館様と連携しての取り組みとなります。
人形劇ワークショップから「一郎くんのリスタート」上演と対話のひろばまで。
気を引きしめて臨みます。

それが終わると2月12日の「親子であそぶ人形劇がっこうinちくしの」です。
まだまだ公演やワークショップのラッシュが続きます。

【釜】

ハンガリーの人形劇ミクロポディウム終了

昨日はハンガリーの人形劇ミクロポディウム公演でした。
世界の人形劇をくるめで!市民実行委員会主催で、無事盛況のうちに終わりました。

上演者のレナート・オンドラシュさん、くすのき燕さん、ありがとうございました。

ミクロポディウムの繊細な神秘的な舞台。
人形というモノの繊細な動きがつくりだす幻想的な舞台は、観客の皆様を日常とは違った世界へ誘いました。
人形の繊細な動きから、別宇宙をつくりだす超絶技巧に驚嘆しました。

またくすのき燕さんの三枚のお札は、人形劇のエッセンスが満載の魅力的な作品。
俳優劇と人形劇、その形態の違いを押さえたエンターテインメントな小品でした。
子どもたちを中心に観客を笑いの渦に巻き込みました。

そして、昨日はボランティアのスタッフとして表方で活躍していただいた実行委員会の皆さん、お疲れさまでした。
おかげさまで、表方に大きなトラブルもなく、お客様に喜んで帰っていただくことが出来ました。

またきめ細かい対応をしていただいた石橋文化センタースタッフの皆様、助成をいただいた福岡県教育文化奨学財団様、資金補助をいただいた久留米 連合文化会の皆様にも御礼申し上げます。

さて劇列車は、明日明後日と、来週火曜日の久留米市内Y保育園「ちょうふく山のやまんば」公演のために、仕上げ稽古に入ります。

それが終われば、福岡市ふくふくプラザでのパペットシアターPROJECT「一郎くんのリスタート」。
そして「親子であそぶ人形劇がっこうinちくしの」「こども人形劇がっこう~低学年編」「こども人形劇がっこう~高学年編」とワークショップの三連続。
さらに「P新人賞受賞記念久留米公演~さちの物語」へと続きます。

ただいま公演とイベントラッシュの渦中です。
体調に気を付けて、このラッシュを頑張って乗りきっていきます。

【釜】

『対話のひろば』が目指すもの

昨日はパペットシアターPROJECT。ボナペティ様と連携して「一郎くんのリスタート」観劇と対話のひろばを実施いたしました。
当日の運営をお手伝いくださったみなさま、ありがとうございました。
また、ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。

「一郎くんのリスタート」は、宮沢賢治童話「どんぐりと山猫」から着想を得て創ったスピンオフ作品です。私たちの作品の主人公一郎は、学校に行っていない(学校に行けない)少年と設定しています。彼の感じている閉塞感・孤立感、そして“出口”を見つけたあとの心理的開放感を、この作品で描いてきました。

不登校を経験した当事者・家族は、大きく頷きながらこの作品を観ます。ある方は、一郎が出口を見つけたことに共感し「私も出口を探し続けたい」と。時には登場人物の両親に心を寄せて「最初のころはこうだったよね」と。

一方で、不登校当事者以外の方々の感想は、両極端に分かれる傾向にあります。「不登校は経験していないけれど、涙が出るほど一郎の苦しみがよく分かる。」という感想と、「どう観ていいか分からない。」という感想です。

このお話は、寓話です。たとえ話のスタイルを取っていますので、観客にとっての経験の引き出しと結び合わせて観る作品です。そのため、個々人の人生経験によって受け取り方が大きく変わります。

自分の感想は、自分だけの大切なものです。
ところが、観劇後のおしゃべり会「対話のひろば」の時間に、自分の感想と他者との感想を聞き合うことで、とたんに深みのある感想になっていくのです。

対話のひろばが終わると、ある方がこんな感想をおっしゃってくださいました。
「自分は“こういう話だろう”と理解して観ていたけれど、他の方は“ひっかかるポイント”が違っていて、それがおもしろかった。」

そうですよね。他者の感想を受けて再び自分の感想を思い返してみると、“なぜ自分はそう感じたのか”“どうして他者はそう感じたのか”と、劇を観た直後の感想よりさらに深い思考に入ることができます。
「対話のひろば」は、参加者同士のそのような化学反応をねらっています。
このような化学反応の場では、私たち上演班もいち参加者にしかすぎません。みなさんのご感想から、私たち自身も思考が深まっていきます。そこには、“一方的に発信する上演者”と“受け身の観客”という境界線なんて生まれるはずがありません。誰もが自分自身の思考の海に潜り込み、自己内対話を行いはじめるのです。

対話のひろばの時間は、“算数の時間”“体育の時間”のような「こうしなければならない時間」ではありません。参加したみなさんにとっての自己内対話のひとときとなることもあれば、参加したみなさんが苦しみを言語化するカミングアウトのひとときになることもあります。

一郎の苦しみに自分の人生で経験してきた苦しみが共鳴し、しゃべりたくなる。聞いていた別の方がその方の心の琴線に触れ、自分もしゃべりたくなるという連鎖が生まれることもあります。
言語化することは、とても大切なことです。他者に向かって発信するときに、「あぁ、自分が苦しんでいた事柄はこれか」と自分の中の苦しみが輪郭をもってはっきりと見えるようになるのです。私自身が、その経験をしてきました。

はっきりと輪郭が見えてくると、「ぼんやりと漫然とただひたすら苦しんでいる」心の状態から、「苦しんでいる理由が分かる」心の状態に移行します。
苦しいことには変わりないのですが、本人の心理状態には雲泥の差があるのです。

誰かの苦しみのカミングアウトに背中を押され、自分の苦しみもカミングアウトできる。それは、「これを発言しても大丈夫」と思える場が成立したときに生まれる結果です。強制されて話せるものではありません。

自分自身や家族が不登校経験者ではないと、“不登校”に含まれる具体的な問題は分からないかもしれません。でも、学校に行けなくて苦しんでいる子・家庭の苦しみには、自分の苦しみの経験をもって共鳴することができるのです。

ボナペティ様と連携して実施したパペットシアターPROJECTでは、ほんとうにたくさんの、多様な化学反応があちこちで起きていました。
参加されたみなさまにとって、「あぁ、参加してよかったなぁ」と思える時間となっていましたら、こんなに嬉しいことはありません。

最後に、今回の実施に当たり、フリースクール関係者や学校に行けてない子どもがいる家庭の方々など、あちこちに声を掛けてくださったボナペティ様。
催しの終了後もひっきりなしにボナペティ事務局長T様と話し込んである参加者の方々の様子を拝見しながら、食材支援を超えた“心の支援”の実際を目の当たりにさせていただきました。
ボナペティT様ならびにスタッフのみなさま、本当に、お疲れ様でした。

【尚】

不登校の子どもを支援するクラウドファンディング

本日は、クラウドファンディングの御紹介です。ちくご川コミュニティ財団様が、「子どもの多様な学びの場を保障するための基金」設立のクラウドファンディングを実施中です。
期間は1月いっぱいまで。300万円を目標にしてあります。
子どもの多様な学びの場を保障するための基金を立ち上げたい | 一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 (congrant.com)
この基金は、不登校の子どもがフリースクールに登校するための奨学金として活用されます。不登校の子どもがフリースクールに通うための奨学金?
それってどういうこと?
そんな疑問を持たれる方も多いと思います。
いや、そんな疑問を持たれる方の方がまだまだ多い状況だと思います。

現在、全国で不登校の子どもたちが約30万人います。そして増加中です。
さて不登校になると、子どもは孤立します。
「子ども時代に友人関係が必須のものである」ことは、子どもの発達に御関心のある方々には容易に想像できることだと思います。
不登校になると、友人関係が途切れます。
現代日本では、子どもの友人関係がほとんど学校で育まれているのですから。

親にしても相談相手が見つからないと、社会的に孤立しがちとなります。

フリースクールは、不登校になって孤立を深めていく子どもと親の社会的なつながりを確保するために、また子どもの学びを保障するために、とても大切な場であるといえます。

しかし。

統計でみてみると、30万人の不登校の子どもの中で、フリースクールに通う子どもは、わずか8%。

なぜなら、フリースクールの平均月謝が3万円を越えているからです。
フリースクールの運営に奮闘してある方々は、様々な助成金を組み合わせながら、学びの場を維持してあります。
その御苦労は並大抵のものではありません。

フリースクールは公教育の外側に位置付けられています。
フリースクール運営者たちがどんなに奮闘努力しても、どうしても月謝が高額となり勝ちです。
つまりフリースクールに通学するためには、家庭の経済基盤が必要な状態であるのです。

では、30万人の不登校の子どもの8%が現在フリースクールに通っているとして、残り92%の子どもはどうしているのでしょう?

中には、各地方教育委員会が設けている適応支援学級(受入数が限られています)に通う子どももいるでしょう。
また再登校する子どももいるでしょう。

でもそれらにあてはまらない子どもたちは?
どうしているのでしょう?
彼らが、社会的つながりからも学びからも切り離され、孤立していることは容易に想像出来ます。

私たちは、弊団体がパペットシアターPROJECTを積み重ねた経験から、この「見えなくされている子ども」が膨大に存在していることに気づいていきました。
ここに社会の手が差しのべられていないことに、気がついてました。

不登校と家庭の経済問題は、密接に結びついています。
そもそも不登校と貧困の因果関係は、指摘され続けた問題です。

だからこそ「フリースクールに通うための奨学金」が必要なのです。
ちくご川コミュニティ財団様の今回クラウドファンディングは、じつにタイムリーです。
ほんとうに待たれていた企画なのです。

なかには、「教育行政がすべきことだ」とお考えの皆さんもいらっしゃることでしょう。
全くその通りです。
しかし、現在のところ教育行政にその動きはみられません。
だったら、フリースクールに通う奨学金設立のために、まず市民が立ち上がる。
それは理にかなった動きです。

まずは市民が奨学金を設立し、それを広げ、そして教育行政を動かしていくのです。
そのような市民の輪が広がり強くなることが、いま大切なことなのだと思います。

最後になります。

「フリースクールに通う奨学金を設立することで、不登校の子どもと親を支援する」。
このことの背景には、上述したように複雑なことがあります。
ですから、一言では市民の皆さんに伝わりにくい状態にあると思われます。

このクラウドファンディングを成功させるには、たくさんの力が必要です。
しかし、一言で相手に伝わりにくいこの取り組みは、「市民の理解が難しい」壁にぶつかることになります。

けれども。

このクラウドファンディングを成功させるために様々な取り組みをすること自体が、不登校の子どもをみんなで支えていこうという機運を高めます。

皆様。
どうかちくご川コミュニティ財団様のHPを覗いてみてください。
そして、ちくご川コミュニティ財団様のクラウドファンディングに御協力いただければ幸いです。

ちくご川コミュニティ財団様。
今回のクラウドファンディングの御成功をお祈り申し上げます。

【釜】